永年住まいの設計に携わってきて感じることは、多くの家づくりが、売り手の都合で行われているということです。住宅の数を増やすことが先決だった時代の売り方が現在でも行われていることが、今の時代にはそぐわないことを痛切に感じ、建て主の立場で考える「もうひとつの家のつくり方」にたどり着きました。営業マンの人件費やモデルハウスの維持費など、直接建物には関係のない費用を省くことで、家の性能や住み心地、デザイン性など、施主のこだわりにコストをかけることができ、より満足のいく住まいを実現することが可能な、コストパフォーマンスの高い、賢い家づくりです。
施主の希望する住まいを形にできるのは、二人三脚で共に考え、パートナーとして詳細な図面を描くことのできる、経験豊富な設計者です。それは施主自らが選んだ、施主の利益を守るために存在する、しがらみのない設計者でなくてはなりません。
この家づくりでは、そうしてつくりあげた精密な設計図をもとに、施主とつくり手である職人さん達をひとつに繋いで家づくりを行います。施主が職人さんとコミュニケーションを持つことで、メンテナンスまで長いお付き合いのできる信頼関係を築くことができ、職人さん達も、建て主の為にやりがいと誇りを持って、腕をふるうことができます。そしてそれは、最終的には様々なリスクを分散させることにも繋がります。
家づくりと一言でいっても、その現場にはたくさんの業種の職人さんが携わっています。大手の建設会社やハウスメーカーであっても、倒産しないという保証はない時代ですから、出来高に合わせて、実際に現場で施工を行う職人さんに施主が工事費を支払うことができれば、元請け会社の利益分をカットできるだけでなく、元請け会社が倒産した場合の工事停止等のリスクを回避することにもなるのです。このプロジェクトでは、建て主のパートナーとして、流通や施工にも精通した設計者がマネージメントを行い、施主の負担をできるだけ軽くした形で分離発注を実現しています。
「家のつくりやうは夏をむねとすべし」と徒然草に吉田兼好がつづったのは、今から700年ほど前のこと。しかし、冷暖房を行うことが前提となった現代の日本人の生活スタイルを、従来のすき間だらけの住まいにあてはめることは、単なるエネルギーの無駄遣いでしかありません。なるべく少ないエネルギーで効率よく冷暖房を行うためには、外気温の影響を受けにくく、そして暖めたり冷やしたりした室内の空気をなるべく外へ逃がさない建物をつくる必要があります。そのためには、断熱と気密の性能を高めることは必須であり、そうした住まいに適したクリーンな暖房方法として、蓄熱型の床暖房を全面に採用し、住まいの不満ワースト3と言われる「暑い・寒い・結露」の無い、省エネルギーで快適な住まいを実現しています。
クリックすると大きな画像で確認戴けます。