私が住んでいるのは40数年前に分譲された古い住宅地です。
周囲を見回してみると、現在では老人の一人暮らしも多く、中には空き家になっていたり、解体・整地されて建築条件付きの住宅用地として売りに出ているところもあります。

幼稚園の送迎バスはあまり見かけなくなったかわりに、デイサービスの送迎バスなら良く見かけるといった具合で、10年後にはどのようになっているかを想像するのはそう難しくない状況です。

そのような中で、私は2005年、自宅の数軒先に中古住宅を購入し、事務所兼椅子のギャラリーとして再生させることにしました。この物件は、昭和39年に建売で分譲された当時のまま、一切増改築等の手が加えらずに約40年間住まわれていたもので、平屋の建坪17坪、6畳二間に四畳半と板間の台所という小さな昭和の家でした。

しかし、構造が当時流行ったコンクリートブロック造ということもあってか、思ったよりしっかりしていましたので、耐用年数は過ぎていたものの、基礎や屋根などに大規模な改修を行い、今の時代に合わせて機能と性能面を向上させながら、オープンな一室空間とし、小屋裏や建具など、この家の持ち味となる部分を残すことで、新築にはない温かみやオリジナリティを出すことができたと思っています。

戦後、大量生産、大量消費によって経済を成長させてきた日本において、住宅産業も「スクラップ&ビルド」によってその売上げを伸ばしてきました。

しかし21世紀に入り、省エネルギーやリサイクルの必要性が急激に叫ばれるようになり、一方では高齢化と、少子化による人口の減少が避けられない状況下にあって、既存の住宅ストックを有効に活用する一つの手段として、リノベーションは今後非常に大きな社会的意義を持つものと思われます。

リノベーションが一般に言うリフォームとどう違うのかというと、リフォームは主にクロスの張り替えや設備の交換等の小規模な工事を意味し、化粧直し的な意味合いとともに、老朽化した建物を初期の性能に戻すことを指します。

それに対してリノベーションという場合、大きな違いとしては、建物の持つ初期の性能以上の新たな付加価値を付け加えて再生させることであり、一度スケルトン(骨組み)の状態に戻して、構造の補強、断熱・気密の強化、配管の移動や間仕切りの変更など、建物の用途の変更まで可能にする、ある程度規模の大きな工事となります。

従って、リノベーションの場合、リフォームよりも工事金額が大きくなってくると同時に、それを進める際には、建築に対するより深い知識と経験が要求されます。

しかし、新築の場合と比べると、解体費用の削減や躯体・部材等の再利用により、一般的に工事価格は新築よりも割安です(建物の状態によっては割安にならない場合もあります)ので、そのメリットを立地や敷地の広さなどに活かすことが可能です。また何より新築では出せない、古い味わいのある雰囲気を出すことができますし、思い出を残しながら機能だけを新しくすることも可能です。

リノベーションを成功させる秘訣は、何よりも物件の選択と、経験豊富な相談相手を選ぶことです。それさえ間違わなければ、これからの家づくりの在り方として、リノベーションという選択もアリだと思います。

当事務所では、積極的に戸建て、マンション等のリノベーションを行っていきたいと思っています。 建て替えや中古物件の購入を検討されている方、リノベーションに興味をお持ちの方は、お気軽にご相談下さい。

現在、一昨年にリノベーションした当方の事務所兼ギャラリーを、見学希望の方に公開しています。 写真では分らない空間の持つ心地よさを、一度体験していただければと思います。